教授挨拶
死者から学び生者に活かす
法医学は医学部のなかで唯一、死因究明を専門とする分野です。とくに異状死、いわゆるアンナチュラル・デスのメカニズムを解明することは事件・事故の真相を解明すると同時に、死者の尊厳を守り、ひいては遺族をはじめとした関係者の気持ちを整理するためには欠かせない仕事です。そのために、我々はコンピューター断層撮影(CT)を活用した死亡時画像診断(Autopsy imaging, Ai)による死因究明と、DNAによる法医遺伝学的な個人識別法の開発を研究の2本柱とし、日常の法医解剖を通して真実を解明し続けています。また不慮の事故の事例からは、なぜ事故が起こってしまったのか、事故を防ぐ方法はなかったのか、類似の事故の再発を防ぐためにはどうすればいいのかを常に考え、死者から学び生者に活かす「予防法医学」の学問体系の確立に向け努力しています。「死因究明により生きている人たちの命を守りたい」。この大きな使命感と責任感を胸に教育・研究を続けています。